ママの遺したラヴソング
2007-05-09


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ママの遺したラヴソング A LOVE SONG FOR BOBBY LONG
2004 米 監督:シェイニー・ゲイベル
スカーレット・ヨハンソン ジョン・トラボルタ ガブリエル・マクト デボラ・カーラ・アンガー

幼い頃に別れた母の訃報。パーシー(ヨハンソン)が彼女に遺されたニューオーリンズの家にやってくると、そこには見知らぬ二人のむさい男、ボビー(トラボルタ)とローソン(マクト)がいた。こんな奴らと一緒に暮らすなんて冗談じゃないと思ったものの、ママのことを知りたくなった彼女は家に留まることにする。3人の奇妙な共同生活が始まった。

正直言って苦手な女優の筆頭に近かったヨハンソン。トラボルタも別に好きじゃないし、マクトが出てなくて暇でもなかったらわざわざ劇場に行くこともなかったであろう。しかし、何度か観た予告の映像で妙に惹かれるものがあった。
南部特有の温そうな風にゆらめく川面と濃密に生い茂る緑。揺れる大木の根元で夢中になって本を読むヨハンソンの姿。

ヨハンソンにトラボルタだったら即時公開になってもおかしくないキャストだが、今頃になって公開とは?の2004年作品である。確かに脚本が地味だし、トラボルタがこの手の作品に出演とは非常に珍しいかもしれない。少なくともシネスイッチでトラボルタを見たのは私ははじめてだ。(笑)
予告では、やや彼女の生い立ちに秘密があるかのような含みを予感させたが、そこに注目すべきではない。孤独に生きてきた少女がママの姿を探すうちに別の大切なものを見つけていく、彼女の成長の物語だ。
年齢に似合わない妖艶さのあるヨハンソンが久しぶりに年相応の素顔ではねっ返りの娘を演じているのが何とも瑞々しくて良い。アクションで見慣れたトラボルタとマクトのむさいアル中の自堕落オヤジぶりも、これまた良い。舞台であるニューオーリンズという南部の温い空気に暑苦しい化粧や衣服は邪魔なのだ。

こうした舞台に自然体の登場人物たち。心地よい空気に文学というとびきりのエッセンスが加わる。トラボルタが元大学文学部教授でマクトが作家志望の教え子。ママの遺品の本を読むことが家に留まる決心をさせたなど、この作品中に染み渡る文学の匂い。台詞にも名著の引用が散りばめられていて、ピリッとスパイスのようにちょっぴり場面が引き締まるのが気持ちいい。
そんなに英米文学に浸透しているわけではないので、観ている最中は当然全部は判らないのだが、その場面の瞬間に、ぐっときたものもあった。数々の言葉たちに興味を惹かれたのは確か。
プログラムを読み直し改めてその文章に触れて再び胸が詰まる。プログラム片手に図書館で引用された文章の本を検索。今、手元に1冊あったりする。(笑)

この作品、音楽に惹かれる人もいるだろう。この空気に流れる曲たちもとても心地よい。純粋にヒューマンドラマに感動するも良し。疲れた頭と心に優しい映画だと思う。


 Happiness Makes up in Height What It Lacks in Length

            Robert Frost / A Witness Tree

  幸福とは長さの不足を高さであがなうもの
                      ロバート・フロスト
[映画レビュー]

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